初めてのおつかい

 ある日、新規のお客さんのところに挨拶に行った。
とあるパーティで知り合ったお客さんで、パーティの翌日にお礼のメールを出したら、その返事でいきなり「1月X日 11:00はいかがでしょうか?」と日時を指定してきた、まぁ、上客という感じがする人だった。

 そういえば、なにげに新規のお客さんのところに一人で行くのは初めてだ。でも、ビビることはない。堂々と振舞えばいいんだ。そう心に言い聞かせて顔を出すと、社長まで出てきた。うーむ。何か困ってることでもあるんかな? なんでも相談に乗りまっせ〜・・・と思っていると、社長さんが期待満々の顔でいわく、

で、今日は何かご提案でも?

#%fjれいふぇlえcえあsdwspあおjq・・・

いきなり面食らった。同い年の有名人の言葉を借りるなら、はい、「想定外」です・・・。

こちらに何もネタがないことがわかると、社長さんは途端にトーンダウンした。なんか、もう、部屋に戻りたがってる様子・・・

この時になって、初めて自分の準備不足を恥じた。

 思い出すのは、昔、つきあってた(というのかどうか微妙な感じの)同い年の女。相撲が大好きだったので相撲に連れて行こうとしたが、手違いでチケットが取れず、しょうがないので、その日はナンジャタウンに行ったりして・・・気の向くままにブラブラして・・・その行き当たりばったりさに呆れた彼女は珍しくブチ切れ・・・その後はケンカが絶えなくなり、最後の最後には現役国語教師の国語力を駆使して杉蔵が夢でうなされるようなメールを送りつけて逃げていきましたとさ。

 はい。何事も準備は大事です。プログラマ、SEなんて掃いて捨てるほど世の中に溢れてる今日この頃、気の利いた提案の一つもできないSEなんて誰もお呼びでない。アドリブがきかないなら、その分、周到な準備が必要だということで。

お酒バトン?

このblogはMIXIの日記も兼ねているので、ちょいと書いてみる。

■お酒バトン■
1、酔うと基本的にどうなりますか。

人格が壊れます。
たまにインチキ関西人になります。
俺は酔ってないと必死に否定し始めたら要注意です。

2、酔っ払った時の最悪の失敗談はなんですか。

難しい・・・あり過ぎて・・・
布団が海になったことかな・・・
起きたら服がなかったことかな・・・
あるいは、三十路記念パーティでマッドカクテルを飲まされまくって、割り勘が福沢さん数枚だったことかな?

3、その時はどの位飲みましたか?

どれだけ飲んだかも覚えていないほど

4、最悪の二日酔いはどんな感じでしたか?

高校の空手部の副将やってた男と飲んだ時
翌日、自分の胃袋から出てきた液体の処理をしていると、そのニオイでさらに胃袋から液体が・・・

5、酔っ払って迷惑を掛けた人にこの場で謝りましょう!!

相川ちゃん、大ちゃん、成美さん(お互い様)、NIKE、押切、ならびに日大工学部シネマ研究会の方々、ショットバーモンシェリー関係者の方々、JTB郡山支店の方々、高篠山森林公園関係者の方々、半田山自然公園関係者の方々、梁川希望の森公園関係者の方々、開成山公園管理者の方々、小笠原海運関係者の方々、石神井警察署のおまわりさん、JR中央線関係者の方々、コンビニエンスサトウのおばちゃん・・・こんなところかな・・・
ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

6、バトンを渡す人は?

酔った杉蔵に迷惑をかけられたことがある人。
もしくは、これを見た人・・・かな?

母親

婆ちゃんの葬式から二日後の昨日、妊娠してた後輩が子供を産んだ。

大学では同じ研究室、卒業後に就職した会社はお互い近所で取引先。そして、飲み友達、かつ、女友達の中では、杉蔵のことをマブダチと呼ぶ数少ない人。

ここまで身近なところで、このタイミングで子供なんかが産まれると、ひょっとして、婆ちゃんの生まれ変わりかって考えてしまう。

その後輩から一言。

誕生日にはお母さんに感謝しな〜

うぅ・・・。さすが、出産を経験して母親になった人間は言葉の重みが違げーよ。

母の日にプレゼントを贈ったりはしてるが・・・
そういえば、実家に帰ると会話はほとんど父親相手だったりするような・・・
たまには母親ともじっくり話してみようかな・・・

合理化の時代

 先週末の連休の最中、父方の婆ちゃんが亡くなった。
明治天皇の額を飾り、質素倹約と貯蓄の達人だった婆ちゃんは生前、「葬式なんか出すのはお金がもったいない。」と言っていたらしい。

 だが、親や親戚達からすると、葬式くらいは出さないと気が済まない。そこで・・・なのか、最近の傾向なのか、葬式は合理的、かつスピーディーに執り行われた。

 親や伯父、叔母たちは、最期の時に近くにいてあげられたからなのか、まだ遺体が残っているからなのか、あるいは集まった人たちに気を使っているからなのか、至って冷静だ。通夜が終わると、棺を囲んで婆ちゃんの思い出話、人生論、孫たちの結婚話で盛り上がりながら飲み明かした。
明くる日は、遠方から来る人や仕事のある人に配慮して、初七日の法要も繰り上げて、葬式の後に続けて済ませた。

 実は人生初めての身内の葬式。遺影には見覚えのある婆ちゃんの笑顔。棺の中にいるのは確かに婆ちゃんだが、遺体保存技術*の進化のおかげで血色の良い顔をしていて、今にも起きだしてきそうだ。とても実感が涌かない。

 そして、葬儀会場。通夜の晩の着替えの浴衣や風呂、洗面用具や酒までなんでも揃い、至れり尽せりだが、よく見ていると、必要な時に必要な係が来るだけで、少人数で極めて合理的に動いている。棺を担ぐのにしても、自分のような体力バカの孫ができる最期のお婆ちゃん孝行として、見事に儀式の流れに組み込まれている。

 だが、棺に遺品や六文銭を入れて花で埋め尽くす時、そして、火葬場で遺体と最後のお別れをする時だけは、血の繋がっている人間のほとんどが目を真っ赤にして泣いていた。もう、二度と顔を見ることはできない。次に対面する時には骨だけになっているのだ。それを考えると、かなりキツいものがある・・・。厳格でいつも冷静な親父だって、所詮は人の子。
結局、他の儀式は故人の人生の終わりの節目をハッキリさせるための形式的な意味あいが強く、本当の人間らしいお別れの儀式というのは、遺体とのお別れの瞬間にほとんどが凝縮されているものだと思った。

 合理的な考えを好み、コツコツ貯めたお金で孫9人全員に莫大な結婚資金をプレゼントしてくれた優しい婆ちゃん。そんな婆ちゃんを昔は仙人のように思っていた。
だが、日記を見てみると、そんな婆ちゃんの人間らしい部分が垣間見え、孫や子供が会いに来た時にいかに喜んでいたかがよく分かった。

やべ・・・俺、婆ちゃんと何年会ってなかったっけ?

合理的に行動するのは大事だ。そして、極端な話、親戚に会わなくても別に死にはしない。でも、人間とつきあっていく以上、人間の心は無視できない。

父方の婆ちゃんはもう手遅れだが・・・せめて残った親兄弟や親戚は大事にしようと思った。たとえ、いつ、何が起こっても後悔しないように。

*遺体保存技術
今は、遺体の血を抜いて防腐剤入りの血を入れることで、まるで生きているかのような状態のまま一ヶ月以上保存できる方法があるそうな。エンバーミングとも言うらしい。

通過儀礼

 今年の元旦は河口湖の温泉宿で迎えた。
最初はのほほ~んとしたムードでいたが、元旦の朝、地元民で幹事の男の「ドドンパ乗ろうぜ~ の一言で絶叫マシン苦手男二人の顔色がみるみると青ざめた。
そのうち一人が杉蔵である。

 杉蔵のチキンさには定評がある。鈴鹿のコースター「ブラックアウト」に乗った時には冗談抜きで顔が青ざめ、一緒にいたヤツいわく、うめき声をあげていたらしい。ひょっとしたら、これがトラウマになっていたのかも知れない。あれ以上のものに乗せられたら俺は死ぬんじゃないかという恐怖がひそかにあった。他人から見たらこれほどいじりがいのある男も少ないが、本人にとっては大真面目である。

 我々二人は必死の抵抗を試みるが、民主主義のルールには逆らえない。周りに押し切られる形で富士急ハイランドの門をくぐってみると・・・見るからに恐ろしげなアトラクションがてんこもり・・・
えーと・・・今時の家族連れは、本当にこんなとこに遊びに来るんですか?

 一発目、ウォーミングアップを兼ねて、レッドタワーなるものに乗った。タワーをまっすぐに登って落ちるヤツだ。自分のマイナスGへの弱さは知っていたが・・・。真面目に心臓を吐き出しそうだ。全身の筋肉に力を入れ、ひたすらに耐えた。意識して呼吸してないと、呼吸するのも忘れそうだ。

 二発目、パニッククロックなる時計。やたらとかわいい外観だが、時計の針に括りつけられてグルングルン回されるのである。さしづめ、笑って人を刺す殺人鬼といったところか・・・。例によってうめき声をあげ、杉蔵は格好のネタになった。ドドンパ? フジヤマ? いや、ムリムリムリムリ・・・ショック死しかねないって。

 周りを見渡すと、かわいい絵などで飾られてはいるが、どう見ても恐ろしげなアトラクションがひしめいている。そして、みんな、ヤル気マンマンである。人生初めての失神体験、あるいは突然の人生の終わりが目の前に迫っていると感じた・・・。

 その後は、他のアトラクションで時間を稼いだ。そうこうしている間に日も傾き、なんとか、そのまま帰れると思った時、最後の試練が待っていた・・・。
杉蔵を含めたコースター苦手男二人が脱走を試みた。しかし、追っ手がやってきて、フジヤマとドドンパの二択を迫られる二人・・・

 しぶしぶ、ドドンパの乗場に向かうと、「ドンドンパッ」という楽しげな太鼓の音が響いている。垂れ幕には、「舞浜にはないものがここにはある ~ネズミーランド職員」とか書いてある。そりゃそうだ。普通のコースターは80km/h~100km/h台前半である。172km/hって、あなた・・・速度が二倍になると運動エネルギーは四倍になるって物理で習ったでしょ・・・死ぬって!
もうすぐ、自分の心臓を吐き出して、この目で見て死んだ人間として、天に召される・・・半分真面目にそう考えた。

 シートに座った時、隣に乗ったもひょいがアドバイスをくれた。「騙されたと思ってリラックスしてみ!」
数十秒後、富士急の巧妙な罠にやられ、覚悟をする=力むタイミングを失い、キョトンとしている間に172km/hの世界に放り出された杉蔵がいた。が、確かに力んでいるよりも楽だったのは確かだ。
これ、慣れれば気持ちいい乗り物かも・・・ちょっとだけそう思えた。

 所詮、本来は楽しむ為の乗り物である。当たり前の話だが、心臓を吐き出すようなことはあり得ない。
しかし、チキン杉蔵が死に匹敵する恐怖と戦ったのは確かである。お世辞にも「自分に勝った」などとは言えないが、乗り越えたのは確かだ。これに比べてみれば、性格のキツいお客さんなんかは屁みたいなものだ。
そう考えると、ちょっと自信がついた。なにげにいい元旦だったかも。

 まぁ、チキン杉蔵がこんな葛藤と戦いを繰り広げている横で、知らないお姉ちゃんたちが「気持ち良かった~ また乗りたいね~ などと言っていたのは内緒の話だ。