よーく考えよう 時間は大事だよー

 ある週末のこと、杉蔵は納期が迫ったお仕事に追われ、パニクっていた。

 まぁ、2〜3日もあればなんとかなるだろ。これが当初の作業量の見積もりだった。納期は一週間。

 しかし・・・まぁ、いろいろとほじくるごとに、「こんな機能まであったのか」という新発見がある。仕様書は簡単なものがあるだけ。その代わりにプロトタイプが既にあり、そのプロトタイプに機能を実装していく形。だから、作業量の重みが実感できず、ナメてたのかも知れない。

 月曜〜水曜までは、他の仕事もこなしつつ、ゆったり、まったりと作業を進めた。が、なかなか進まないものだ。

 木曜日、ついに他の予定をキャンセルして、全力を入れて焦り始めた・・・睡眠二時間。

 金曜日、家を出た記憶がない。睡眠不足で頭が回らず、二度手間、三度手間を繰り返すが、眠ろうとしても緊張のため、眠れない。でも、たまに意識が飛ぶ。余計に頭が回らなくなる。睡眠三時間。

 土曜日、やっと終わりが見えてきた・・・が、一つ、作った経験がない機能の実装が含まれていた。トライ・アンド・エラーを繰り返す。焦りに焦り、夜明けが近くなる。
激しく眠い。なぜか声がかすれる。外のちょっとした物音がとても気になる。相変わらず、頭が回らない。絶対に寝たほうがいい。でも、今寝たら、絶対に終わらない。下手したら、起きたら月曜とかってこともあり得る。
日が昇った頃、昼までになんとかなる見通しがついた。しかし、睡眠不足のせいなのか、はかどらない。時計の針が異常に早く進む。なんとか終わった時、時計を見たら、もう、午後の三時くらいだった。

 まぁ、我ながら、なんと計画性のない・・・。

 こんなやり方を続けてたら、いつか、倒れて死ぬとリアルに感じた。いや、本当、こんなことを何度もやったら死んじゃうって、俺。だいたい、俺、六時間寝ないと次の日の午後に意識が飛ぶようなヤツだぜ・・・
計画的にやってたら、たぶん、一日六時間寝てても終わったと思う。

 最初にいろいろと調べて作業内容をキッチリと把握して、計画を立てることの大事さを、身をもって感じたような気がする。

 神様。もうこんな無計画なことはしません。許してください〜と、近所の井草八幡宮で買ったミニ神棚に誓ってみた。

解体処理

 昔、インドのボンベイで日本航空の飛行機が間違って別の空港に着陸してしまった。ジェット機が離陸するためには、長い滑走路が必要。誤着陸した空港の滑走路では、とてもジェット機は飛べない。どうしようもなくなったそのジェット機は、泣く泣く解体処分されたそうな。

 ある日、突然死したうちのビデオデッキ、こいつが先週たまたまちゃんと動いてくれたので、最後のお仕事をさせるつもりでテープを入れてしまった。このテープは、昔好きだったBAKUというグループの曲が入ったビデオ。こいつをビデオキャプチャーボードに繋いで、データをDVDにでも焼いて、後はビデオデッキとはお別れのつもりだった・・・

 しかし・・・PCとの間のややこしい配線を済ませ、電源を入れてみると、さっきは動いてくれたビデオデッキが動かない・・・件のテープを飲み込んだまま、うんともすんとも言わない。

 実は、このビデオデッキにも、テープにも思い入れがある。
ビデオデッキは学生の時の友達のお下がり。DVDが普及する前だった当時は、十万円くらいするものだったはず。
一方、テープは、ある友達が「いろいろ世話になったね。ありがとう」と言って、杉蔵にプレゼントしてくれたテープだ。BAKUが解散して何年も経ち、探すのが大変だったかも知れない。

 言わば、どちらも友情の証的な意味がある一品。どちらも五体満足で済ませたいが、杉蔵は引越しを控えた身。余計な荷物を抱える余裕はない。

 迷った末、もう壊れてるビデオデッキは諦めて解体し、テープを取り出すことにした。うぅ・・・
ビデオデッキにしてやれることは、解体した後に、出来るだけ元の形に近い形にまで再び組み立てて「死に化粧」してやることだけだった。

 ボンベイでジェット機を誤着陸させたパイロット、機を整備してた整備士、みんな、悔しくて、こんな気分で泣いたんだろうな・・・