ジェノサイド

 今のアパートに引っ越してから、いろいろな蟲さんと仲良くなった。いや、仲良くするつもりはないのだが、やつらが勝手に同棲を求めてくる。1Fって、蟲が入って来やすいんだな・・・

 普段から飯を食べてる時など、ふと壁などを見ると、一瞬だけ黒い影が見えることがよくあった。これって、飛蚊症の類なのか?と思いもしたが・・・ある日、会社から帰ってみると、なんと、空き袋の中に彼はいた。シャアザクが赤い彗星なら、こちらは黒い彗星とでも呼ぶべきか。予想の三倍のスピードで縦横無尽に走り回る、正式名称:ゴキブリだ。
とっさに袋を閉じてみると・・・
まぁ、意外にかわいいやつではないか。
クネクネ動く触角、カサカサと音を立てて歩くそのユーモラスな動き。
考えてみると、ゴキブリが害虫である理由は、不潔なものに触れた体で、人間の生活空間を走り回ることだけだ。
ビニール袋に密封すれば、害などはない。それどころか、ツノなどをつければ、カブトムシやクワガタムシとどれだけの差があろうか?
うん。君は今日からうちの家族だ。

え? お外に出たいの? またまたぁ~ 君は狭い所の方が好きでしょ。

え? お腹がすいた? 袋の中にお菓子のカスが大量に入ってるでしょ。

 別に憎しみを込めているわけではない。餌だって、彼のお家のお菓子の袋の中にたくさん。

 しかし、二週間後、悲しい結末が待っていた。ある日、会社から帰った杉蔵は、袋の中身を見ると、彼がひっくり返っていた。袋を振って、彼をうつぶせにしてあげたが、彼は二度と帰らなかった。
うーむ・・・コンバットが悪かったのか? 確かにコンバットのせいで、うちに出入りするゴキブリさんとアリさんが勝手に死んでるのを見かけたが・・・あれは食べなきゃ効かないはずだし・・・餌はかなり減ってたが・・・まだ残ってたし・・・

 悲しみに沈む杉蔵は、ゴキちゃんを燃えるゴミに出した。
彼は・・・彼は池袋の清掃工場の煙突から天に昇って、星になったんだ。さようなら。君のことはしばらく忘れないよ。

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