たった一つしかないもの?

会社帰りのいつもの乗り換え駅、ちょっと寄り道してみると・・・
閉店セールをやっているお店をみつける。

あれれ? ここ、かなり前から閉店セールやってないか?
お店の中はほとんど空っぽで、いかにも閉店直前という雰囲気のまま、数ヶ月はそのまま閉店セールをやっている気がする。
まぁ、こういうスタイルのお店もあるんだよな。

思い出すのは学生の頃、大学の近所にあったメッセやビッグサイトの地方版のような展示場でやっていた即売会のイベント。
当時大好きだったあの人へ渡すため、プレゼントを探していた杉蔵は、あるネックレスに心を奪われる。イベント最終日のせいか、その店はほとんど商品もなく、数少ない売れ残り商品の中にそのネックレスはあった。お店の人いわく、「このネックレス、もう、最後の一品なんですよ。どうですか?」
デザインもさることながら・・・最後の一品というのが、なんとなく気に入った。
今は、あの人を取り巻く、その他大勢の中の一人でしかない。が、いつかは、あの人にとってただ一人の人になりたい。そんな願いをこめ、あの人へのプレゼントとして、そのネックレスを買った。

その後、会場内を歩き回り、さっきのネックレスを買った店の前をたまたま通りかかった杉蔵は、目を疑った。
さっきのネックレスとどう見ても同じものがお店に置いてあるではないか。
実は、残り一つというのは、杉蔵を買う気にさせるための嘘だったのだ。

そう、所詮は量産品のネックレス、それは、世の中に出回る同じ型の製品の一つに過ぎなかったわけで・・・そして、あの人にとって唯一の人になるという夢も破れた杉蔵もまた、あの人を取り巻くその他大勢の人の一人に過ぎない立場に甘んじるのでありました。

お後がよろしいようで・・・

このお話の教訓は・・・本来、ものを選ぶ場合、残り一つだとか、限定品だとか、そんなことはどうでもいいはずのことです。
ものを買う場合は、自分が本当に欲しいものを選びましょう。焦って選んでも碌なことがありません。