クソ野郎になってみた

 今思えば、事の始まりは、うちに回ってきた請求書だったのかも知れない。

なんで、うちがそれ払うの?

 一年ほど前、杉蔵を巻き込む大事件が起き、あちこちとの話し合いを経て、今の体制が出来上がった。

 自分らの業界は、いろいろなところが土建屋にそっくりである。下請け孫請け曾孫請けひこ孫請け当たり前の業界。当然、元請から末端に降りてくるまでの間に入る企業は利益を抜いて下に回す。まぁ、そんなことは学生の時にアメリカが誇る某I社の曾孫請けくらいのバイトを経験したので、百も承知。「I社の”方”から参りました三浦です。(偽名)」とか。

 それを利用して、自分にかかわる人たちみんなの顔を立てたかった。何度も対立したけど、なんだかんだでかわいがってくれた人、昔からの仲間、自分を必要と言ってくれた人などなど。まぁ、杉蔵得意の偽善者キャラの発現である。かぶってるのは、どこかの皮だけじゃない! ちゃんとネコもかぶってるぞ!

 最初は円満だと思ってたのよ。でもね、確かに誰も損はしないはずだと思ってたんだけど・・・どこから見ても、杉蔵は自分とこの人間。気軽に使おうとする。これじゃぁ、体がもたない。そして、別にお手当てがもらえるわけでもなんでもない。プレッシャーはかけられる。正直、もうちょい、お金をくれと言いたかった。

 一番の望みは、この微妙な立場を誰かにわかって欲しかった。でも、いろいろなところが関係する問題なので、あちこちで愚痴ったけど、それでもまだ口にはリミッターがかかっていた。コミュニケーションが不足してたのかも知れない。現場は喋るタイプの人間が少ないし、なぜか、仲良くなった人に限って異動でいなくなる。なんのいやがらせだ・・・?
一番つきあいの長いのは、実験用サーバ「グレープ」君・・・生き物ですらない・・・。

 そんな時、昔の懐かしい仲間が声をかけてくれた。「そんなことになってるのか。だったら、俺らと一緒にやろうよ。」
今、この話に乗ると、今一緒にやってる人たちに迷惑がかかる。だから、今まではそういうことは、考えなかった。でも、もう、我慢の限界だ。この話に乗れば生活が楽になる・・・道徳なんてクソ食らえだ! ついに自分の本性が現れた。

 だいたい、間の某社なんかは、件の請求書の件を考えても、営業費用だけ抜いて、コストを現場サイドに押し付けてるやり方にしか思えなかった。意見しても口でねじ伏せられることが何度か続き、相談するのも億劫になってきた。もういいや。一度、やってみたかったんだよな〜ちゃぶ台反し♪

 手を切ることにしたあの人にそれを仄めかしたメールを送った夜、東京はものすごい嵐だった。現場帰りの途中、カバンの中で何度も電話が唸ってるが、とても電話を取れる状況じゃない。電話が唸るだけで、あの人の怒り狂う顔が目に浮かぶ。でも、もういい。あの罵詈雑言に耐えれば、仕事の相手は懐かしいあいつに交代だ。

 しかし、この問題は、意外な決着をみた。怒り狂うと思ったあの人は、大幅な譲歩をしてきた。そして、請求書の件はどうやら、手違いだったようだ。
まぁ、なんというか、会社を経営し、何度も修羅場を越えてきた男の本気を見たような気がする。詳しい内容は書けないが、その一言一句は、心を動かされる何かを感じるような言葉だった。

 結局、この件は円満に決着した。が・・・いいのか、俺? まるで、ネコにおもちゃにされるネズミじゃん・・・。俺には争い事が逃げていく特性でもあるのか? 収穫はあったけどさぁ・・・議論できてねぇよ、俺。
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 とあるマンガの台詞です。「こういうものはなぁ、ゆっくりとガスを出して、ガスが部屋全体に行き渡るまで待ってから一気に火をつけるんだよ。そうじゃなきゃ、クーデターなんて成功しねぇよ。」

 はい、反面教師からの教訓です。怒りのゲージを溜めるつもりなら、MAXになるまで黙ってじっくり待ちましょう。ゲームによっては、超必殺技が使えたような・・・気がする。精神衛生的に良い生き方をしたい場合は、マメにコミュニケーションを取りましょう。ガス抜きになります。別のものを抜き抜きしてもガスは抜けません。

以上

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