解体処理

 昔、インドのボンベイで日本航空の飛行機が間違って別の空港に着陸してしまった。ジェット機が離陸するためには、長い滑走路が必要。誤着陸した空港の滑走路では、とてもジェット機は飛べない。どうしようもなくなったそのジェット機は、泣く泣く解体処分されたそうな。

 ある日、突然死したうちのビデオデッキ、こいつが先週たまたまちゃんと動いてくれたので、最後のお仕事をさせるつもりでテープを入れてしまった。このテープは、昔好きだったBAKUというグループの曲が入ったビデオ。こいつをビデオキャプチャーボードに繋いで、データをDVDにでも焼いて、後はビデオデッキとはお別れのつもりだった・・・

 しかし・・・PCとの間のややこしい配線を済ませ、電源を入れてみると、さっきは動いてくれたビデオデッキが動かない・・・件のテープを飲み込んだまま、うんともすんとも言わない。

 実は、このビデオデッキにも、テープにも思い入れがある。
ビデオデッキは学生の時の友達のお下がり。DVDが普及する前だった当時は、十万円くらいするものだったはず。
一方、テープは、ある友達が「いろいろ世話になったね。ありがとう」と言って、杉蔵にプレゼントしてくれたテープだ。BAKUが解散して何年も経ち、探すのが大変だったかも知れない。

 言わば、どちらも友情の証的な意味がある一品。どちらも五体満足で済ませたいが、杉蔵は引越しを控えた身。余計な荷物を抱える余裕はない。

 迷った末、もう壊れてるビデオデッキは諦めて解体し、テープを取り出すことにした。うぅ・・・
ビデオデッキにしてやれることは、解体した後に、出来るだけ元の形に近い形にまで再び組み立てて「死に化粧」してやることだけだった。

 ボンベイでジェット機を誤着陸させたパイロット、機を整備してた整備士、みんな、悔しくて、こんな気分で泣いたんだろうな・・・

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